治 療 実 例
バドミントンやマラソン(10km-42.195km)がきっかけで、10年前から左アキレス腱の痛みが断続的にありました。厚底の靴で走ると痛みが酷く、薄底の靴の方が痛みは少ない状態でした。今でも毎日5km走っていますが、4ヶ月後にフルマラソンに出場するのが目標ということで、当院の治療を希望して受診されました。
エコー検査では、左アキレス腱の著明な腫脹、および腱内外における異常血流信号の増生を認めました。アキレス腱の変性所見(エコー輝度が低く黒色に描出される)も認めました。一方、右アキレス腱も通常よりかなり大きく腫れているようにも見えましたが、これまで痛めたことはなく、元々大きめであることが推察されました。正常のアキレス腱の大きさには個人差があるため、反対側が健常であっても必ず両側観察することが重要です。左側については、典型的なアキレス腱炎であり微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)を受けていただきました。
血管造影を行いますと、特に後脛骨動脈造影にて病的新生血管(モヤモヤ血管)が造影剤の濃染像として描出されました。治療後は画像上速やかに消失しました。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療後1週間はじくじくしていましたが、2週間経つと痛みが消失しました。治療後1ヶ月の診察時にお伺いした際には、1-2km走ってみて大丈夫であったため、毎日6km走っていると言われました。エコー検査では、異常血流は完全に消失しており、アキレス腱腫脹も大幅に減少していました(最大短径12.3mm⇒9.0mm)。その後も再発なく順調に経過されています。 本症例は、日常生活には支障がないものの、スポーツ時に痛みで悩まされている状態でした。こうした場合、ほとんどの方の目標はスポーツ復帰ですから、できるだけ組織を温存してかつ短期間で治せる治療方法が求められます。運動器カテーテル治療は、ステロイド注射と異なり組織を傷める懸念のない治療方法ですので、スポーツ障害に対する治療方法としては最適です(ステロイド注射を検討する場合でもその使用量を大幅に減らすことができます)。 日常生活に支障をきたすほどこじらせていなければ、本症例のように非常に早期から回復します。そして、再発しにくいのもこの治療方法の良い点です。アキレス腱炎に限らず、スポーツ障害でお悩みの方、あるいはパフォーマンス向上を目指す方など積極的にご検討いただくと良いかと思います。
PREV
NEXT
Copyright © なごやEVTクリニック