治 療 実 例

複数回の外科手術でも改善せず、原因不明と言われた全身の難治性疼痛

鴨井先生による動画解説

受診までの経過

両手の痛み、両側首肩の痛み、左下肢のしびれ、両側腰痛、右股関節の痛みにて当院受診となりました(痛みの強さ順)。2年前から両手痛と頸部痛の症状があり、頸椎ヘルニア手術を受けました。しかし、その後も両手の痛み・しびれ・腫れが改善することはなく、握力が一桁まで低下し、物をつかむこともままならずポロポロと落ちてしまうといった状態でした。夜間痛もあり、痛みで眠れないほどでした。手の症状は頸椎が原因ではないと判断され、膠原病科、神経内科へ紹介となるも原因は不明で、サインバルタやビタミン剤を処方されましたが効果はありませんでした。手の握力低下については頸椎疾患の後遺症と言われていました。一方、下肢に関してですが、10年前に左変形性股関節症のため、人工股関節術を受けたほか、腸腰筋切除も受けましたが改善しないため別の病院で6年前に2回目の手術(人工骨頭再置換術)を受けました。これにより鼠径部の痛みはとれましたが、左下肢のしびれは残ったままでした。特に長い距離を歩くと左大腿外側~下腿にしびれが強くなり、両側の足首痛も生じていました。こうした状態で、交通外傷で不自由となった夫の介護や、父親の入院なども重なり心身とも限界の状態でした。

診察時の所見

非常に複雑な経過であり多彩な症状を生じています。こうした場合、まず痛みや辛さの順番を付けていただくのが重要です。まず最も痛い部位を治すことが痛み治療の基本です。2番目以降に痛い場所は1番目の痛みによりマスクされたり(実際よりも弱く感じていたり)、強く感じられたり(特に腰痛は心因性ストレスの影響を強く受ける)しますので、正しく評価ができないので最も辛い部位の治療後に改めて評価する必要があります。前述の通り、最も痛みがあるのは手でしたが、手指の関節の変形以上に非常に強い症状が出ており、CRPS(複雑性局所疼痛症候群)のようでもありました。エコーで異常血流の増生が著明にみられましたので、手首の動脈からモヤモヤ血管(動脈塞栓術)を行いました。治療は著効し、当日から楽になり夜も眠れるようになりました。しかし、左手1-3指の痛みが残っていましたので、後日左手には2回目の追加治療を行いました。次のターゲットは首肩ですが、実は肘も含めて痛みがあるとのことでした。負荷テストにて陽性所見を認め、両肘とも上腕骨内外側上窩炎の存在が示唆されました。圧痛も著明でした。肩関節に関してはエコーで異常所見なく。可動域も問題ありませんでした。首肩こりは誰が触ってもわかるくらい非常に重症で、首の可動域も高度に制限されていました。首肩こりのレベルとしては最重症の状態であり、複数回の治療が必要になる可能性について十分ご理解いただいたうえで運動器カテーテル治療(運動器EVT)による動脈塞栓術を行いました。

治療の所見

両側の首肩肘手とかなり広い範囲にわたる治療となりましたので時間がかかりました。
それぞれの箇所に典型的なモヤモヤ血管を認め、すべてに治療を行いました。

治療後の経過

治療直後からかなり楽になったと言われました。首や肩がすごく軽くなり、首前方の手術後の痛みもとれました。手は指先が押しつぶされているような感覚があったのですが、それがなくなりました。表情がとても明るくなったのが印象的でした。著効していますが、とはいえまだ効果の持続性を含めてまだまだ慎重にみていく必要がありました。2週間後、良い状態が続き、さらに右側の症状はほとんどとれていました。右手のしびれはもう取れないと思っていたのでとれてうれしいと言われました。首前方の詰まった感じもなくなっていました。左頸部や肘の痛みがまだ残っていましたので、追加の注射治療を行いました。治療後1ヶ月半での受診の際には、周囲の人や夫から表情が明るくなった、顔色がよくなったと言われたと笑顔で教えていただきました。右手の握力も戻ってきてペットボトルの蓋が開けられるようになりました。お箸も持てるようになりました。全体的に痛みが軽減したためか、特に関係のないはずの左下肢のしびれや右股関節の痛みもよくなってきました。その後、しつこく残っている左側の痛み改善のため追加治療を希望されましたので、3ヶ月の時点で2回目のカテーテル治療を行いました。血管造影検査をしてみると、初回に比べてほとんどの場所で改善していましたが、左の首こりに関係するモヤモヤ血管はむしろ初回よりも増悪していました。首肩こりは必ず原因がありますが、この方の場合はテレワークも含めてパソコン作業でした。生活改善の重要性をしっかりと理解して取り組んでいただけましたので、現在も月に1回程度の通院を続けていますが、良い状態をキープできています。手の痛みも手全体であったものが指先だけになってきて、血色もよくなっています。元々の状態が非常に重症ですので、まだまだこれで安心というわけではありませんが、ご本人の苦痛は大幅に軽減され、とても明るい表情でいらしていただけるようになっています。当院の持てる医療知識と技術を結集して、引き続き全力を尽くしてお支えしていきたいと思います。

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