治 療 実 例

【70代:女性】エホバの証人信者に生じた6回水を抜いても治らなかった右肩の激痛(変形性肩関節症)

鴨井院長による動画解説

受診までの経過

10ヶ月前から右肩の痛みがありました。当初は五十肩と言われリハビリに通っていましたが改善せず、別の整形外科に行ったところ水が溜まっていると言われ6回に亘り水を抜きました。腫れや熱感は幾分かおさまりましたが、痛みの強さや可動域が改善しないことから当院にご相談いただきました。尚、糖尿病の既往がありました。

診察時の所見

腕の挙上などは可能でしたが(屈曲・外転問題なし)、水平内旋や後方内旋に高度の制限がありました。エコー検査では広範囲の腱板断裂に加えて棘上筋腱の腫脹なども見られました。上腕骨頭の変形所見も随所に観察され、レントゲン検査の結果と併せて右変形性肩関節症と診断いたしました。肩は膝や股関節に比べると過重負担が少ないことから関節変形が進みにくい部位ですが、変形性関節症となってしまうと強い炎症がしつこく起こり続けます。通常の治療では改善が難しく、運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)をもってしても完全に痛みをとることはできないこともあります。また、治癒後の再発リスクも単純な肩関節周囲炎と比べて高いです。以上をご理解いただいたうえで、治療を受けていただきました。

治療の所見

肩関節を取り囲むように複数の動脈から治療を行いました。画像はそのうちの1つである肩甲上動脈造影を示しています。モヤモヤ血管が濃染像として描出されています。治療後は画像上速やかに消失しました。

治療後の経過

治療後3日くらいから改善し、1ヶ月後にはずいぶん楽になりました。ズンズン、ズキズキする症状がよくなり、角度によりズキッとする症状もあったのですがそれもなくなりました。治療後2ヶ月時点で、8-9割方の症状は改善しました。その後も順調に経過されていましたが、4ヶ月経つ頃、特にきっかけなく少し痛みが再燃し元の症状の半分程度の痛みを生じてきたため局所注射の追加を行いました。エコー上は明らかな増悪はしておらず、その後また治まっていますが、引き続き慎重に外来通院を続けているところです。
変形性肩関節症の経過としてはある程度予想どおりの経過と言えます。ご本人もよく理解しておられますが、カテーテル治療後に一旦大幅に楽にはなるものの、完全に痛みを無くすことは難しく時折多少の痛みが出てくることがあります。以前のように水が溜まったり、日常生活に支障をきたすほどのひどい痛みになることはなく少量の注射加療で対応可能ですが、今後もある程度上手に付き合っていく必要はあります。この方とのお話しで大変印象に残ったことがあったので、ご紹介させていただきます。実は『エホバの証人』という宗教信仰のある方だったのですが、医療機関では『エホバの証人』というのは宗教的輸血拒否が存在する宗教として知られています。病院では、治療法を提示し選択していただくにあたり、輸血が困難なことが分かった場合外科手術に踏み切れないというジレンマがあります。医療として必要であっても患者の意思決定が尊重されなければなりません。知人の方の中にもそうした理由で外科手術を受けられずお悩みの方がおられるとのことでご相談いただいたのですが、この運動器カテーテル治療というのは侵襲が少なく極めて安全な治療であること(当然ですが、輸血事例は1例もありません)からそうした信仰上の要因で外科手術が受けられない場合でもお役に立てると思います。実際にお受けになって、これなら知人にもすすめてあげられると言っていただきました。エホバの証人の信者は国内だけでも約21万人(2009年)いらっしゃるようです。お悩みの方はどうぞお気軽にご連絡いただければと思います。

変形性肩関節症の詳しい病状説明はこちら

 
 

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