治 療 実 例
ゴルフや筋力トレーニング(バーベルやダンベルを使用した『アームカール』)が原因で5年前からゴルフ肘(右肘内側)になりました。常時痛みがあるためゴルフが出来なくなってしまいました。そればかりか、物を持ち上げる動作や、洗車後の拭き取り動作や手を洗う動作でも痛みを感じるようになり日常生活に支障をきたすようになりました。整形外科で何度か注射を受けましたが効果を実感できたことはなく、痛み止めの内服や低周波治療器などでだましだまし過ごしていました。更に、2年前からですが、筋力トレーニング『ダンベルプレス』が原因で痛めた右肩関節の痛みもありました。このような状態でも治療可能なのかということ、肩と肘を同時に治療できるかということも含めてご相談いただきました。 内服;トラマールOD 50mg/day ロキソプロフェンNa 60mg/day
身体診察およびエコー検査において典型的なゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)および右首肩こり(頸部では特に右側屈・回旋動作において中等度制限あり)を認めた他、右肩関節のレントゲンでは肩鎖関節の有意な開大を、エコー検査では同部位における血流信号の増強を認めました(写真④)。右側に偏って、首肩肘にそれぞれ強い慢性炎症を抱えていることにより一連の不調をきたしていることが分かりました。それぞれ単独でも治療適応となるほどの重症度でしたが、これら全ての治療を一度に行うことは可能ですので同日に全ての治療を受けていただきました。
肩関節では、特に胸肩峰動脈の肩峰枝の血管造影においてモヤモヤ血管(病的新生血管)が 濃染像(stain)として描出されました。よくある五十肩や腱板断裂の場合の見え方とは全く異なっています。首肩こりの血管(深頸動脈、頸横動脈))やゴルフ肘の血管(尺側側副動脈、尺側半回動脈)の造影においても、それぞれ典型的なモヤモヤ血管が描出されました。治療後は画像上速やかに消失しましたが、肩鎖関節におけるモヤモヤ血管は単回投与では消えづらかったため、複数回の薬液投与を要しました。モヤモヤ血管の程度が必ずしも病状の重症度と相関するわけではありませんが、画像上は強い炎症を反映したものと考えらえました。
治療前画像:損傷を受ける、あるいは繰り返しのストレスにより発生した異常な新生血管 治療後画像:カテーテルを用いて塞栓物質を血管内に投与し新生血管を塞いだ状態
治療後1週間で肩関節の痛みが一旦大幅に改善しましたが、その後再燃してきました。治療後2ヶ月を過ぎる頃、右肩関節および右肘の痛みは日常生活に支障をきたなさいくらいに改善し、概ね当初の7割改善しました。しばらく様子を見たいとご希望があり、この時点で終診となっています。日常生活に支障をきたさないレベルまで順調に回復しましたが、肩鎖関節や上腕骨内側上顆においては、炎症が起こっているというだけでなく実際に靭帯や腱付着部の損傷を伴っていますので、今後の過度な筋力トレーニングなどでは痛みが再発しかねません。トレーニングについては慎重に再開していただくようお話しています。
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