令和の痛み治療【CRPS(複合性局所疼痛症候群)】
複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome:CRPS)は、以前はカウザルギー、RSDなどと呼ばれていました。重度の神経障害性疼痛のひとつです。多くは、怪我や手術、あるいは関節の長期固定などをきっかけとして発症し、きっかけの状況とは不釣り合いな激しい痛みや触ると悪化する痛みが続きます。とくにきっかけなく発症することもあり、しばしば原因不明といわれます。風があたる、服がすれる、湿布を貼るなど通常は痛みにつながらない程度のわずかな刺激を強い痛みとして感じる感覚障害(アロディニア)を伴う場合もあります。
典型的には四肢に発症します。
・刺激を起している損傷や疾病とは不釣り合いな激しい疼痛 ・疼痛性刺激に対する過剰反応 ・通常なら疼痛を起さない刺激に反応した痛覚 ・皮膚萎縮(光沢・乾燥・鱗状を示す。) ・多汗症 ・浮腫 ・こわばり ・毛髪の成長低下 ・患部のまだら様骨粗鬆症 ・運動制限 ・皮膚温異常 ・筋萎縮 ・爪の変化(初期は速く伸び、やがて伸びにくくなる。脆くなる。) ・症状の拡大
CRPS診療用診断基準
1.きっかけとなった外傷や疾病に不釣り合いな持続性の痛みがある
2.以下の4項目のうち、3つ以上の項目で1つ以上の自覚的徴候がある ・感覚異常:自発痛、痛覚過敏 ・血管運動異常:血管拡張、血管収縮、皮膚温の左右差、皮膚色の変化 ・浮腫・発汗異常:浮腫、多汗、発汗低下 ・運動異常・萎縮性変化:筋力低下、振戦、ジストニア、協調運動障害、爪・毛の変化、皮膚萎縮、関節拘縮、軟部組織変化
3.診察時において、上記の項目のうち、2つ以上の項目で1つ以上の他覚的所見がある
4.上記の症状や徴候をよりうまく説明できる他の診断がない
CRPS臨床用判定指標 自覚的症状(病気のいずれかの時期に、以下の自覚的症状のうち2項目以上該当すること) 1.皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化 2.関節可動域制限 3.持続性ないし不釣り合いな痛み、しびれたような針で刺すような痛み、または知覚過敏 4.発汗の亢進ないしは低下 5.浮腫
他覚的所見(診察時において、以下の他覚的所見の項目を2項目以上該当すること) 1.皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化 2.関節可動域制限 3.異痛症(触刺激または熱刺激)ないしは痛覚過敏(ピンプリック) 4.発汗の亢進ないしは低下 5.浮腫
・理学療法や作業療法 ・神経または脊髄への刺激 ・痛み止め(鎮痛薬や鎮痛補助薬) ・精神療法 ・鏡療法 通常、複合性局所疼痛症候群の治療には、複数の治療法を組み合わせて用います。
脊髄刺激療法では、脊髄を刺激する装置(電気信号を発生する装置)を、手術によって(通常は殿部か腹部の)皮膚の下に埋め込みます。装置から伸びる小さなワイヤー(導線)を、脊髄の周りの空間(硬膜外腔)に留置します。この信号により、痛みの信号が脳へ送られる過程に変化が生じ、不快な症状の受け止め方が変わります。経皮的電気神経刺激が用いられることもありますが、その有効性を示す科学的根拠は、脊髄刺激療法に比べてはるかに薄弱です。経皮的電気神経刺激では、電極を皮膚の上に置きます。この電極から発生する弱い電流により、皮膚にチクチクする感覚が生じますが、筋肉が収縮することはありません。 複合性局所疼痛症候群の患者に抑うつや不安がみられる場合には、精神療法が用いられることもあります。
上記とは別に、近年注目されている運動器カテーテル治療という方法があります。痛みを長引かせている微細な病的新生血管(いわゆるモヤモヤ血管)に直接アプローチする方法です。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は検討されるとよいでしょう。
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