令和の痛み治療【五十肩】
五十肩(ごじゅっかた、英: frozen shoulder)とは、肩の可動域が制限され、痛みや違和感を伴う疾患です。特に40代以上の女性に多く、原因は不明な点が多いため、治療が難しいとされています。今回は、五十肩の原因や症状、診断方法や治療法について解説します。
【五十肩の原因】 五十肩の原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような理由が考えられます。 ・肩関節周囲炎:肩の周りの組織が炎症を起こすことで、肩の可動域が制限される。 ・肩関節の過剰使用:肩を過剰に使ったことで、肩の周りの組織が痛みを引き起こし、可動域が制限される。 ・冷えやストレス:冷えやストレスが原因で、筋肉や関節の血流が悪化し、炎症を起こすことがある。 ・糖尿病や甲状腺機能低下症などの代謝異常:これらの疾患が五十肩の発症に関与することがある。
【五十肩の症状】 五十肩の症状は、次のようなものが挙げられます。 ・肩の痛み:激しい痛みから、鈍痛やジワリとした痛みまでさまざま。 ・可動域の制限:肩が上がりにくく、後ろに引けにくくなる。 ・夜間の痛み:眠りを妨げるほどの強い痛みがある場合がある。 ・筋肉のこわばり:肩周りの筋肉が硬くなり、こわばる感じがある。
【五十肩の診断方法】 五十肩の診断方法は、主に次のようなものがあります。 ・症状の聞き取りや検査:痛みや可動域の制限、筋力の低下などの症状を聞き取り、触診や動かし方を確認する。 ・レントゲン検査:肩の骨や関節の状態を確認する。 ・MRI検査:筋肉や軟骨、靭帯など、軟部組織の状態を確認する。
【予防方法】 五十肩を予防するためには、以下のような方法があります。 ・ストレッチや運動:肩を常に動かすことで、筋肉や関節を柔らかく保ち、五十肩の発症を予防することができる。 ・過剰な使い方をしない:肩を過剰に使わないようにすることで、肩の負担を軽減し、五十肩の発症を予防することができる。 ・バランスのとれた食生活:健康的な食生活を維持することで、代謝異常による五十肩の発症を予防することができる。
以上、五十肩についての説明でした。症状がある場合には、早めに医師に相談し、適切な治療法を受けることが大切です。また、予防にも取り組むことで、健康な肩を維持することができます。
保存療法が第一選択です。痛み止めの内服はあまり効きません。ステロイド注射は有効ですが、6回以上の注射は効果が乏しいとの報告があります。理学療法(リハビリ)は可動域改善などに有用ですが、痛みの強い時期には困難であり、ブロック注射と併用して行うなども試みられています。6-12ヶ月経過しても改善がみられない場合、線維化して硬くなった関節のふくろを切り離すような手術(鏡視下授動術)が検討されます。これらとは別に、近年注目されている運動器カテーテル治療という方法があります。痛みを長引かせている微細な病的新生血管(いわゆるモヤモヤ血管)に直接アプローチする方法です。通常の治療で良くならない場合、あるいはとにかく早く楽になりたい方は検討されるとよいでしょう。
五十肩の同側再発は稀ですが、反対肩にも生じる場合があります。また、初回よりも2回目以降の方がより症状が強くなることが多いです。
五十肩を発症してしばらくはさらに痛みが強くなることがあります(~9ヶ月)。夜間の痛みも伴い眠れなくなったりするのでご不安なことと思いますが、症状が変化することが五十肩の特徴でもあります。
五十肩に限らず、炎症の強い時期に無理にマッサージを行うとかえって悪化する場合があります。炎症はまず鎮めることが先決です。五十肩はマッサージでよくなる病気ではありません。
軽症であれば自然に治ることもあります。一方、7年経過しても4割の方は何らかの後遺症を抱えているなど以前考えられていたほど『放っておけば治る』疾患ではありません。
急性痛は冷やした方がよいことがほとんどですが、慢性痛に関しては『温めることで血管が拡張します』が、『冷やした後も血管は一旦縮こまった後拡張する』ためどちらが良い、どちらが悪いということは必ずしもありません。しかし、過度に温めたり冷やしたりすること、また大きな温度変化にさらされることで痛みは強くなります。尚、五十肩は温めたり冷やしたりすることで治るような病気ではありません。
これまでの医療では、本質的に炎症を大幅に鎮めることが叶いませんでした。五十肩は比較的強く、そしてしつこい炎症を伴いますが、持続することで肩関節における一部の組織が硬くなり(線維化を起こす)、『腕が上がらない』『後ろに手を回せない』などといったことが起こります。悪くすると、拘縮肩に陥ってしまい、外科的に切開が必要となってしまうことすらあります。原則、炎症期には安静が最善であり本来であれば積極的に動かすべきではないのですが、線維化や筋肉の過度の緊張により拘縮肩に陥ってしまうことを避けるために炎症が強い時期でもリハビリが行われているのです。強い痛みがあるにもかかわらず無理な動きを強いれば、痛みが悪化することもあります。その点、カテーテル治療により痛みを血管の中から治していく場合は大幅に炎症および痛みが鎮まりますので、特別なリハビリは不要なことがほとんどです。リハビリをお受けになる場合は、あくまでも愛護的に施術してもらうようにしてください。
周囲の方やテレビなどで、骨折後に腕にギプスをはめて肩から三角巾で吊っている姿を見たことがあると思いますが、その状態が肩関節にとっては負担が少なく痛みが軽減できる肢位となります。仰向けですと、お腹(左肩の場合はやや右寄りの下腹部)に手を当てて肘を浮かせた状態です。肘が床に着かないよう枕やタオルなどで高さを作ってあげる必要があります。横向きでしか寝られないという方は、痛い方を下にしないでください。
SIRVAの可能性があります。症状や検査所見が五十肩とも類似していること、SIRVAについて広く認知されていないことから五十肩と言われてしまうことが多いですが、厳密には異なります。一方、ワクチン接種後数週間は問題なく過ごせていて、数ヶ月経ってから生じている痛みの場合は五十肩の可能性があります。詳しくはSIRVAの項も御参照ください。
およそ2週間で夜間痛が、1ヶ月~1ヶ月半で元の痛みの7割程度が、その後動作時の痛みも含めて消失していくことが多いです。可動域は痛みが緩和されるだけでも一定程度改善しますので、1ヶ月でも日常生活には支障をきたなさい程度になっていきますが、さらなる回復には少し時間を要します。3ヶ月~6ヶ月の期間に元の9割以上の状態に改善します。注射治療を併用することで、これらの治癒過程を早めることが可能です。
病的新生血管が大幅に間引かれることにより炎症が強力に鎮まります。それに伴い溜まっていた水は自然吸収されます。特に針を刺して抜く必要はありません。
ほとんどの方は特別なリハビリを要することなく治っています。治療後3ヶ月以上経過して、痛みは取れたものの可動域が全く改善してこないなどと言った場合には、極少数ですがその時点からリハビリを受けていただくことにより回復しています。リハビリを併用することでより早い改善につながることが期待できますが、その場合も無理なリハビリは避けていただいたほうが望ましいです。当院では、治療後1ヶ月間は外から力を加えるようなことは避けていただいています。
必ず痛みが先に取れて可動域は遅れて回復します。痛みがとれたからといって無理に可動域を拡げようとするのは避けてください。かえって新しい炎症ができかねませんし、そういうことをしなくても自然に回復することがほとんどです。また、物が落ちる際に咄嗟に腕を伸ばしてしまう、蚊をたたくなど同様の動きについても避けるようご注意ください。
飲酒や喫煙は慢性疼痛にとっては基本的には悪影響を及ぼします。飲酒で一時的に痛みが緩和されたように感じても、それはいわば感覚が麻痺しているにすぎません。血行が大幅に変化しますので、かえって痛みが増すこともあります。しかし飲酒してはいけないということではありません。喫煙は100%良くないですが、飲酒は程度の問題であり、その方にとっての適量であれば構いません。但し、飲酒をすることで治療が台無しになるということはありませんが、どちらが良いかと問われれば痛みが良くなるまではお酒はやめた方が早く楽になります。少なくとも、治療当日は禁酒していただくようお願いしています。尚、治療の有無にかかわらず、飲酒される場合は血管内が脱水傾向となりますので、併せて十分にお水も飲むようにしてください。運動に関しては、五十肩は腱板や腱などが損傷しているわけではありませんので、痛みを伴わない範囲であれば運動していただいても大丈夫です。
必要ではありませんが、貼ることは問題ありません。貼り続けることで皮膚を傷めないようには気を付けてください。
滑液包や上腕二頭筋長頭腱周囲などに溜まった水(水腫)は炎症が鎮まることにより自然吸収されます。特に針を刺して抜く必要はありません。そもそも溜まる原因は、自然に吸収される程度を越えて炎症が優勢になっているからであり、元々人間には自然に治る力があります。必要なのは炎症を鎮めることです。一方、原因(根本)の治療をしないでおいて水だけ抜いてもすぐに溜まります。
2回目の方が症状が強くなるということは多く経験されます。加齢による回復力の低下や痛みの制御機構の機能低下なども考えられますが、病的新生血管がより多量に増殖してしまっていることが多いです。初回発症後、病的新生血管が一定程度自然に残っているということも考えられますし、一種の化学反応ですから、2回目の方がより強い炎症反応が起きやすいということかもしれません。
痛み止めは漫然と飲むものではありませんし、だんだんと効きにくくなっていきます。本質的な治療ともなりません。急性期や痛みの極期などに短期間服用することは効果的ですが、痛み止めの効果が出ているうちに根本治療を受けることが重要です。例えばロキソニンやボルタレン、セレコキシブなどといったNSAIDsと言われる薬剤は長期服用により胃腸障害や腎機能障害が起こる懸念がありますし、その他の薬にも便秘や口喝、体重変化など様々な副作用が生じることがあります。目的、服用期間を明確にして服用してください。
大きく分けて2つの要因です。一つは強い痛みのため、もう一つは肩関節周囲組織が硬くなってしまうためです(線維化)。回復するには逆に痛みが良くなること、硬くなった組織が柔らかくなっていくことが必要です。
いわゆる五十肩後遺症です。五十肩にかかると病的新生血管(モヤモヤ血管)が増えますが、自然に治った場合には一定程度残ってしまっていることがあります。何年にも亘り残ってしまっている可動域制限をカテーテル治療のみで改善させることは困難ですが、痛みや違和感などの後遺症については治療可能です。当院では、5年、10年経過したような後遺症の方も運動器カテーテル治療(微細動脈塞栓術)により回復しています。
激しい炎症を伴って痛みが強い時期にはしない方が良いです。かえって悪くなりかねません。ある程度痛みがおさまっているときや、ごく初期の違和感程度の時期にはストレッチをすることで病的新生血管を減らすことが期待できます。
とにかく早く治しましょう。この病気が怖いのは、強い痛みと可動域制限、夜間痛による睡眠障害、ついには鬱状態を伴い生活の質を落としてしまうところです。しかもこれらが時間の経過とともに進行します。他の疾患にはみられない特徴ですが、できていたことが段々とできなくなっていくということは大変なストレスです。経験して初めてわかると、どなたも口にされます。 カテーテル治療が非常に有効な疾患です。自然経過よりも間違いなく早く、しっかりと治ります。痛み止めや湿布も止められます。他の治療で治らない場合、長年経過した後遺症にも有効です。ほとんどの場合で特別なリハビリに通わなくて済むのも良い点です。再発は非常に稀であり、患者治療満足度は非常に高いと言えるでしょう。
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