令和の痛み治療【変形性膝関節症】

変形性膝関節症の原因は何ですか?

膝を酷使する日常生活(しゃがみこむ、正座など)、外傷(靭帯・半月板損傷)の他、 加齢、性別(女性)、肥満、遺伝的な要因と報告されています。

変形性膝関節症と言われました。周りにも同じような方がたくさんいます。
どのような病気ですか?

日本での有病者数は約2500万人、そのうち症状を有する者は約800万人と報告されています。女性に多く(男女比1:2)、加齢とともに増加して女性の約70%が罹患するといわれています。関節軟骨の変性と破壊、軟骨下骨の肥厚や骨棘の形成、滑膜炎による疼痛や水腫、可動域制限を特徴とします。

膝に水がたまるとどうして悪いのでしょうか?

膝に水がたまると、大腿四頭筋の筋収縮が反射的に抑制される、関節原性筋抑制という現象が起きます。太ももの筋肉に力が入りづらくなり膝関節を支える力が不十分となるわけです。これにより、リハビリにも支障をきたします。症状を悪化させないためにリハビリでは大腿四頭筋の筋力強化が行われますが、うまく進めることができなくなります。これらにより、膝に負担がかかり続けて余計に膝が痛くなり、変形がさらに進むという悪循環に陥ってしまうのです。抜いてもまたたまってしまうとはいえ、水を抜く意義はあるわけです。

変形性膝関節症の痛みはずっと続くのですか?

外傷や抗重力筋の萎縮などにより膝関節に負担がかかると、関節の隙間(関節腔)に、軟骨のかけらが剝がれ落ちます。通常は免疫反応により除去されますが、処理しきれなくなると、免疫反応がさらに増幅され炎症反応も拡大していきます。軟骨組織には痛みを伝える神経線維が存在しないため、関節腔に炎症があっても当初はあまり痛みを感じません。次の段階に進むと、滑膜に炎症が拡がり、さらに軟骨組織が破壊されるようになります。ひとたび、炎症拡大と軟骨分解が進んでいくと、免疫応答の標的となる物質も2次的、3次的に増えていきます。滑膜や関節の隙間にはさらに多くの免疫細胞が幅を利かせるようになり、組織破壊と再生を繰り返しながら軟骨下骨、靭帯、関節包といった周囲組織にまで炎症が拡がり、関節破壊が進行します。これらの組織には、痛みを伝える神経線維が密に分布しているため、痛みは直ちに惹起されます。また、これらにともない、滑膜の増生、骨棘形成、関節包の肥厚といった、エコーやレントゲンではっきりと捉えられるような変化が進行していきます。
このように、ひとたび炎症が進行して軟骨破壊の連鎖反応が始まると、壊れた細胞成分などを標的として次々と免疫応答が行われ炎症が雪だるま式に膨らんでいきます。終わりのない慢性痛とも形容されます。痛みを伝える神経線維が、発痛物質や炎症物質の濃縮スープに浸されて繰り返し刺激されるので耐え難い痛みが延々と繰り返されることになるのです。 初期段階では、痛み止めの内服や関節注射などで痛みを改善することができますが、次第に何をやってもよくならない痛みとなり、著しく生活が制限されるようになります。こうした段階では治療が難しくなってきますので、なるべく早期に治療介入を行い、姿勢・歩行の矯正や筋力強化などにより再発・進行予防に努めることが重要です。また、将来的には、このごく初期の免疫応答に介入するような薬の開発が期待されています。不幸にして一定以上進行してしまった方にも、最近有効な治療法が開発されました。過剰な炎症反応、免疫応答を止めるように働きかけることのできる治療です。このような反応の持続に関与している病的新生血管(モヤモヤ血管)を大幅に減らす治療です。詳しくは治療方法や運動器カテーテル治療の項をご参照ください。

変形性膝関節症はどんな症状が生じますか?

初期では、膝関節の軟骨や半月板に、摩滅、変形、断裂が生じることで関節のかみ合わせが悪くなり、立ちあがりや歩き始めに痛みを感じるようになります。進行すると、階段の昇り降りが辛く感じるようになり、さらに軟骨がすり減っていくと、しゃがむ動作や正座ができなくなってきます。起床時に膝がこわばるようになり、ついには膝関節に水がたまり腫れた状態となります。最初は、水を抜いたりヒアルロン酸注射をすることで一時的に収まりますが、悪化すると常に水がたまった状態に、さらに滑膜組織が過剰に増殖してくると抜くこともできず腫れたままの状態となります。いよいよ軟骨がすり減り大腿骨と脛骨が直接擦れるようになってしまうと、平地を一歩一歩歩くたびに激痛が生じるようになり、『歩けない状態』となってしまいます。

変形性膝関節症にはどんな治療方法がありますか?

非薬物療法と薬物療法を組み合わせることが重要です。
非薬物療法としては、減量や下肢筋力強化、歩行補助具の使用(杖・歩行器)のほか、関節動揺性やマルアライメント(O脚X脚)の補正などの理学療法が挙げられます。
薬物療法としては、痛み止めの内服(セレコックス・カロナール・トラムセット・リリカなど)および注射療法(ヒアルロン酸注射・ステロイド注射)です。状態により薬剤が検討されます。最近は、PRP注射(自己多血小板血漿)や幹細胞治療(再生医療)などの新しい試みもなされています。但し、変形が非常に高度に進んでくると薬物療法には限界があり、外科手術が必要です。状態に合わせて、人工膝関節置換術、単顆置換術、高位脛骨骨切り術などが選ばれますができるだけ自己組織を温存できた方が良いと考えられています。また、これまでの治療法とは一線を画する新しい治療が注目されています。微細動脈塞栓術という、痛みを長引かせている異常血管(モヤモヤ血管)に直接作用する運動器カテーテル治療です。詳細については他項に譲りますが、変形膝関節症に対しては、軽症~重症、外科手術後であっても治療可能です。既存の治療とは全く異なるアプローチとなりますので、何をやってもよくならない、とにかく早く治したい、手術は極力避けたいといった方はご検討されるとよいでしょう。局所麻酔による治療が可能ですので、一定時間横になることが可能であれば高齢であっても安全に治療を受けることが可能です。但し、重症度により治療後の経過は異なりますので運動器カテーテル治療専門施設にてご相談ください。
最後に重要なことを申し添えたいと思います。いかなる治療を受けたとしても、治療後の再発予防が重要だということです。どの治療も変形を治すわけではなく、例え外科手術であっても膝を取り換えるわけではありません。一旦楽になっても、治療後から既に膝関節は私たちの体重を支え絶えず負担がかかることとなります。冒頭に述べた非薬物療法については治療後も再発予防のために取り入れることが重要です。必ずしもリハビリに通い続ける必要はありませんが、自宅でできることをアドバイスしてもらうとよいでしょう。より簡便にできることもあります。ほとんどの方は足元に原因があります。靴やインソールの工夫により歩行の矯正やマルアライメント(O脚X脚)の補正を促し負担を減らします。信頼できる靴屋さんを紹介してもらってください。

カテーテル治療を受けると、もう外科手術は受けられないのでしょうか?

カテーテル治療(微細動脈塞栓術)は血管を通じて病的新生血管(モヤモヤ血管)にしか作用しません。患部に対して注射針を刺すことすらいたしませんので、ある意味最も身体に優しい治療と言えるかもしれません。その後外科手術を受ける際に妨げとはなりません。

人工関節に代えても取れない痛みがあります。もうあきらめるしかないのでしょうか?

人工物が入っている方は、まず間違いなく病的新生血管(モヤモヤ血管)が増えていますので、微細動脈塞栓術(運動器カテーテル治療)により症状の改善が期待できます。手術後の痛みに対してはどの医療機関も頭を悩ませているところですが、この新しい治療によりその痛みを改善させることが可能です。あきらめずに、運動器カテーテル治療専門施設にてご相談ください。

膝のカテーテル治療はどのように行うのでしょうか?

足の付け根の血管(鼠径部の大腿動脈)から下向きに入口の管を入れます。そこに細い管(カテーテル)を挿入して、膝まで進めていき、標的血管を選択した後に血管造影を行います。モヤモヤ血管を確認したうえで、一時塞栓物質を投与します。投与後、直ちに造影上モヤモヤ血管は消失します。複数の標的血管の治療を行った後、管を抜いて圧迫止血します。治療時間は20-30分程度です。両側の場合や、動脈硬化が強い場合はもう少し時間がかかります。日帰り治療です。

膝のカテーテル治療後、当日歩いて帰れますか?

治療後に強い痛みが残ることは稀です。運動障害が生じることもありませんので、歩いてお帰りいただけます。

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